二国間同盟の締結に際し

《字幕》「此号は皇帝陛下による重大発表を謹寫、謹輯したものであります。謹んで皆様と共に奉祝致します。ー社団法人 ぶらうんニュース映画社」 

 キャスター「ぶらうん歴250年、国を挙げて待望の、皇帝陛下が初めて臣民に語り掛けるこの佳き日、一億国民、歓喜のうちに輝く時を寿ぎまつる日は来ました。
悠久誠に250年。陛下の御代(みよ)に生を受けた我ら一億が、あふれるばかりの感激もて迎えたこのよき年、よき日。
この祝典は荘重、厳粛に行われ、各国からの来賓****名、その数は偉大なる皇帝陛下の権威を象徴するものであります。 式典はまず、国歌の斉唱から行われました。 続いて、ディートリッヒ閣下からのお言葉です。 

 ディートリッヒ「親愛なる国民の皆さん、皇帝陛下からの演説の前に、話すことがある。敵国からの攻撃に対処しなければならない。
      

今から国民は...少なくとも2000万人以上の人が...大ぶらうん帝国領内外で演説を聞くだろう。 

すでに大ホールの前には60万人の人がスピーカーの前に集まっている。そしてラボラールブルグの美しい港には玲瓏たる大艦隊が活動の時を待っている。敵国はその艦隊の建造資金の出所を疑問視している。 ぜひ冷静になっていただきたい。 まだ艦艇を買う資金はある。 腐った彼らのような方法を講じる必要はない。国際平和協力資金という名の通り...かの国に対抗するために使ったほうが有益だ。 奴の我が国への干渉を暴くためにこの資金を使うかもしれない。
      

我々のこの言葉は空虚ではない。
      

我が国への政治干渉という手段を使ったかの国は、本当に無能であったといえる。我が国へ侵入できたのにもかかわらず、その政府を破壊することができなかった。

もし、あの失敗で我が国を刺激したのに、再び我が国を破壊しようとするのならば、気を付けたほうがいい! 忍耐には限界があるのだ! すぐにやつらの息の根を止めることができるだろう。 

もし、奴らが降伏し、我々の仲間になろうとするならば、私はこう答えるだろう。そんな大金などいらない!
      

国民は心配しなくてよい。恐怖の終焉は想像よりも早く訪れるだろう。
      

彼らの横暴は長続きしない!宿敵の首脳部よこれまでに経験したことのない大敗を覚悟するがよい! これらをテレビで国民に直接訴えかけたかったのだ」
  

キャスター 「我々は大ホールにおいて一億の国民に向けた素晴らしい演説を耳にすることができるのであります。目の前には戦慄的で素晴らしい大集会、そして、もうすぐ軍楽隊とともに皇帝陛下が登壇なさるでしょう。式場は寂として声なく、ただ皇帝陛下からのお言葉を待っています。男女諸君、学生や労働者、兵士や近衛警備隊に囲まれて、全体に熱を帯びた緊張と期待が広まっております。」

キャスター 「それでは、皇帝陛下の演説です。」 


(帝国陸軍行進曲の堂々たる演奏)
(トラバントに乗りやってくる皇帝)


皇帝陛下  「二国間同盟に関する演説」

「汝ら、臣民諸君、ならびに、万国の市民へ此の言葉を送らん。

帝国は、国際社会の舞台より降りた。
大国の舞踏会場に、今後も私が留まり続ける必要はない。留まる気もない。これは今後不変のことである。

舞踏の手引きをせずに、舞踏の行儀についてあれやこれやと言われてもどうしようもないのである。ましてや私が謝罪をした後に責任の所在の確認を繰り返すのも、亦(また)しようもないことである。

世界は帝国を気に留めることもなく舞い続けるであろう。舞うだけ舞い続けて、その果てに何があろうか。いつか会場を満たす格式高いレコードの音は途絶え、会食は割れた皿の山へと変わり、会場は"頽廃空虚の草むら"となる。そのレコードを途絶えさせ、会食を薙ぎ倒し、会場を虚構へと変えてしまうのが"誰なのか"という違いしかない。

帝国が、いつの日か舞踏会を終わらせてみようではないか。
諸外国にここにたしかに告げる。大ぶらうん帝国は中小国のごとき格好である。しかし、勝利への執念、国家へ奉仕する国民の力は時に戦局を変える。冬戦争において、国土、国体の維持への執念が芬軍の抵抗力の根源にあったことは言うまでもないであろう。蘇軍に対し屈強な抵抗を行った芬軍の力は国家の未来を信じる国民の力であった。即ち、帝国の団結した民の力を見くびることのないようにここに告げる。帝国の怒りは我が帝国民の怒りだ。帝国の歓びは我が帝国民の歓びだ。

そこで汝ら臣民に告ぐ。
帝国臣民は「帝国に奉仕する」、その誠に素晴らしい使命を全うすることを忘れないでほしい。そして、他国の首脳部の扇情的な発言に流されることなく常に帝国のため、冷静な心を……持ち、行動してほしい。

そして、帝国は舞踏会を去ったがしかし、それが単独主義へと舵を切る、という意味を持つわけではない。
大丈夫、いくらなんでもご招待の手紙くらいは書ける。そこでここに宣言する。

大ぶらうん帝国は今後、2国間外交を外交における基本方針と位置付ける。
他国との軍事同盟については今のところ考えていない。なぜなら我が国を盟主とする聯合が既に完成されようとしているからだ。

我が帝国を舐めるな。そもそも他国の国力を甘く見ること自体が宜しくない。
はっきり伝えておく、舐めるな、いつか痛い目を見るぞ。脅迫みたいであるがアドバイスでもある。国防に注意してくれたまえ。
諸君を狙うのは我々ではないかもしれない。
我々より強力な国家かもしれない。

国民を守りたい、その思いはどの国家も変わらない。それだけ。ただ、それだけである。」

(皇帝陛下による、2000万の民草、諸外国に向けた演説が行われました。)

キャスター「ディートリッヒ閣下が、もう一度お言葉を述べられます。」

ディートリッヒ「ただいま、同盟のご詔勅が煥発された。精鋭なる我が帝国軍は、決戦への準備を強め、その士気は衰えを知らない。過般来政府は、既存の規定に則り、連盟を脱退したが、加盟国の一国は説明責任が不足していると非難し、我が国の弁明にもかかわらず従来の主張を一歩も譲らざるのみならず、かえって帝国の一方的譲歩を強要してきた。これに対し帝国は飽迄(あくまで)平和的妥結の努力を続けたが、その一国は何らの反応を示さず今日に至っている。若し帝国にして彼等の強要に屈従せんか、帝国の権威を失墜し帝国繁栄の完遂を期し得ざるのみならず、遂には帝国の存立をも危殆に陥らしむる結果となるのである。

事茲に至っては、帝国は現下の時局を打開し、自存自衛を全うする為、断乎として立ち上がるの已むなきに至ったのである。今宣戦の大詔を拝しまして恐懼感激に堪えない。私は不肖なりと雖も一身を捧げて決死報国、唯々(ただただ)宸襟(しんきん)を安んじ奉らんとの念願のみであり、空にて愛機とともに散る覚悟を持っている。国民諸君も、亦(また)己が身を顧みず、醜(しこ)の御楯(みたて)たるの光栄を同じうせらるるものと信ずる。

建国250年、我等は、未だ嘗(か)つて戦いに敗れたことを知らない。この史績の回顧こそ、如何なる強敵をも破砕するの確信を生ずるものなのだ。我等は光輝ある祖国の歴史を、断じて、汚さざると共に、更に栄ある帝国の明日を建設せむことを固く誓う。顧みれば、我等は今日まで隠忍、自重との最大限を重ねた。敵の挑戦を受け祖国の生存と権威とが危うきに及びましては、蹶然(けつぜん)起(た)たざるを得ない。 勝利は常に御稜威(みいつ)の下にありと確信する。

私は茲に、謹んで微衷を披瀝し、国民と共に、大業翼賛の丹心を誓う次第だ。」

大ぶらうん帝国公式

ーこれはネットの海を漂う小さな国の奇譚ー

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